HAGANEYA(@imech_jp)です。

1997年リリース。自身のソロプロジェクトの契約問題を巡り92年に脱退した Rob Halford さんに代わり、96年に新ボーカルが加入。初期の名盤『Sad Wings of Destiny(邦題:運命の翼)』収録曲から Ripper というワードを拝借し Tim ‘Ripper’ Owens と名乗る彼は、その “前任者に酷似したハイトーンボイス” によってバンドの危機を救うことになります。

ビデオゲーム(スーファミ?)のRPGに出てくるラスボスを無理やり拡大表示したかのような “ドット絵” ジャケや、4th『Stained Class』以来久しぶりに刷新された微妙なバンドロゴが、結果的に “Tim時代(ニューメタル時代)のトレードマーク” となってしまうのは皮肉ですが・・・メンバーもまさか、ここまで不評だったとは思いもよらなかったのではないでしょうか。

Judas Priest に限らず、90年代にニューメタル路線に浮気して大コケする大御所メタルバンドは多かった気がしますが、背景には Metallica が『Metallica(通称:ブラックアルバム)』をセールス的に成功させた影響も相当大きいかと思います。これで「俺達もイケる!」と勘違いしてしまったバンドはかなり多いはずです。というか、(ブラックアルバム自体は名盤ですが)Metallica自身も結局その後の作品で迷走することになるので、立場的にはそんな変わらない気もします。

スポンサードリンク

 

中盤のダレ方が酷いものの、序盤&終盤でしっかりとカバー

Timさんがボーカルを担当した2作をザックリと “ニューメタル路線” と表現していますが、実はこの2作同士も音楽性が微妙に異なります。

本作『Jugulator』がグルーヴ・メタル(日本における “モダン・へヴィネス” とほぼ同義)で、次作が(ガチの)ニューメタルといった感じです。どちらもダウン・チューニングしたギターを使用していますし、広義的には一緒の扱いで問題ないと思います。 それにしても、次作の日本版Wiki “だけ” が現時点で存在しないのは、本作がコケた影響なのか、それとも「本当にヤバいのは次作」と暗に示しているからなのか・・・

Fear Factory風の機械的なSEによるイントロ〜Tim時代の幕開けを飾るかのようなハイトーンボイスにワクワク感が止まらない #1『Jugulator』、裏打ち&ツーバスドラムとPhil Anselmo(Pantera)を彷彿とさせる中音域のダミ声ボーカルの相性が最高な #2『Blood Stained』、前曲同様の裏打ちリズムに切れ味鋭いカッティングが彩りを添える #3『Dead Meat』、Rob Zombieを思わせるダンサブルな人力インダストリアル・メタル・ナンバー #4『Death Row』、ダウン・チューニングがゴリゴリに効いているスロー・チューン #5『Decapitate』、Enter Sandman臭いリフにTimのダークなハイトーンボイスが意外と合う #6『Burn in Hell』、普通のスロー・チューンかと思わせつつ、中盤辺りで変拍子や疾走ツーバス・パートになだれ込む #7『Brain Dead』、中盤で微妙なメロディのサイケデリック・ロック・パートや疾走パートが突然現れるカオスなスロー・チューン #8『Abductors』、アルバム中盤のダレ感を一気に取り返すかのようなスピード感&メタルコアにも通ずる緩急の付け方がクールな #9『Bullet Train』、往年のJudasサウンドとは趣が違うものの本作唯一とも言えるメロディアス・ナンバーをようやく堪能出来る #10『Cathedral Spires』。

こう言っちゃなんですが、曲順は意外と悪くありません。

アルバム中盤のあまりにも退屈過ぎるスロー・チューンの連続には辟易しますが、冒頭4曲と終盤2曲によって一定のクオリティが保たれているため、聴き終わった後は「あれっ?思ったほど酷くないかも」といった印象を持ちました。強引に帳尻を合わせにいっている感は拭えませんが、極端な音楽性の変化を許容できる方であれば、本作も Judas Priest のディスコグラフィの一つとして普通に受け入れられるのではないでしょうか。

本作随一の疾走感を誇る『Bullet Train』は、暗黒期の作品をスルーしていた方も聴いておいて損はないと思います。Jugulator 特有のダークな音楽性が上手くハマったパターンですね。他の作品で言うと『Nostradamus』のスピード・チューンに一番近いかもしれません。

 

表向きの低評価理由は “隣の芝生に浮気した” ことだけど・・・

本作がリリースされた1997年〜次作『Demolition』がリリースされた2001年辺りの期間はニューメタル最盛期なので、Judas Priestが “隣の芝生” に魅力を感じた気持ちもよくわかります。ただ、伝統的なメタルを愛する方々からは「何でそっちに行った?」と首を傾げられたでしょうね。

ぶっちゃけ、異ジャンルとの交配が進みまくっている現在のメタルシーンに本作が産み落とされていれば、当時ほどは叩かれなかったはずです。(次作はともかく)Jugulator に関して言えば “時代が悪かった” と言ってしまっても良いと思っています。だって普通に格好良いし。

とは言いつつも・・・『Painkiller』の記事でも書きましたが、本作が低評価を受けてしまったのは、グルーヴ・メタル路線に浮気したことよりも “Judas Priestならではの味わい深いメロディ・ラインが無くなってしまった” ことのほうが原因としては大きかった気もします。あのメロディさえ捨てていなければ、もしかすると『Point of Entry(邦題:黄金のスペクトル)』や『Turbo』程度の低評価に抑えられていたかもしれません。

スポンサードリンク