HAGANEYA(@imech_jp)です。

1988年リリース。地球に鉄槌を下しているかのような “げんこつ” ジャケは、作品そのものの過小評価ぶりとは裏腹にバンドTシャツ等で比較的よく見かける気がします。

本作のステレオタイプな評価は「前作『Turbo』の低評価を挽回するため、必要以上に肩に力が入り過ぎてスベった作品」といった感じでしょうか。Turbo路線のサウンドが大好きな私にとっては嘆かわしい話です。

確かに本作は若干 “器用貧乏” 気味というか・・・他作品における “圧倒的なキラーチューン” が不足しているようにも見えますが、裏を返せば “駄曲が少ない” ということでもあります。前作について私は「良い意味で引き立て役がいない作品」と表現しましたが、本作はその路線を引き継いだ “シングル集” 的な取っつき易さを持つ作品だと言えるでしょう。

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前作のシンセ路線を踏襲しつつ『Painkiller』への布石となる曲も

ブルータルなイントロ&前半のマイナーコード〜中盤のメジャーコードへ切り替わる瞬間が堪らないスピード・チューン #1『Ram It Down』、前作のシンセ・サウンドを踏襲しつつ “怒り” 成分が増強された #2『Heavy Metal』、裏打ちリズムにポップなサウンドが乗る #3『Love Zone』、シリアスなリフが前曲とのギャップを刺激する #4『Come and Get It』、次作のLeather Rebelを彷彿とさせるツーバスVS高速オルタネイト・ピッキングの応酬に興奮を隠せない #5『Hard as Iron』、荘厳なイントロからの不自然なインダストリアル・メタルに80年代的チープさを感じる長尺曲 #6『Blood Red Skies』、現代的なカッティングが格好良いインダストリアル・メタル・ナンバー #7『I’m a Rocker』、Chuck Berryの原曲を過剰にアレンジした結果Night Rangerみたいになってしまった #8『Johnny B. Goode』、叩きつけるようなドラムサウンドとサビのポップ・サウンドが対照的な #9『Love You to Death』、ドゥームメタルばりのスロー・チューンでアルバム最後を締めくくる #10『Monsters of Rock』。

ジャケ絵や表題曲(#1)の雰囲気から「ブルータルな作品?」といった先入観を抱きがちですが、Judas史上最もポップな前作『Turbo』の正統後継作とも言えるコマーシャルなシンセ・サウンドを軸にしつつ、次作『Painkiller』路線を先取りしたかのようなスピード・チューンを散りばめた作風となっています。

というかここまで来ると、メタルにシンセを足してみましたレベルではなく普通に “インダストリアル・メタル” です。前作のようにシンセ一辺倒といった感じでもないので、全体的なバランスとしては本作に軍配が上がりますね。

 

歴史的傑作(Painkiller)~暗黒時代(Jugulator&Demolition)の源流?

次作からドラムを担当する Scott Travis さんは歴代ドラマーに比べ手数が多くメタル的ですが、前任者 Dave Holland さんの表題曲におけるプレイからは “ハードコア・パンク” 的な手触りを感じます。この手数の少なさを「物足りない」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、黄金期のJudasサウンドを支えてきたドラマーということもあってか、個人的にはこちらのほうが耳馴染みが良くて好きです。

ちなみに、全く共感されなさそうなことをあえて書いてみると・・・『Painkiller』『Jugulator』『Demolition』は、サウンド面だけで見ると “3部作” で、この流れの源流となるのが本作冒頭を飾る表題曲(#1『Ram it Down』)だと解釈しています。各作品アプローチは異なりますが、ギターのリフのメロディが80年代までの Judas Priest とは明らかに異なるんですよね。次作の表題曲(#1『Painkiller』)イントロのリフで顕著に現れていますが、90年代以降の彼らのリフからは禍々しい雰囲気を感じます。直近の作品も同様です。

「”影が薄い” 上に “問題作”」的な扱いを受けがちですが、本作こそまさに “80年代Judasサウンドと90年代以降のJudasサウンドの分岐点” となる作品ではないでしょうか。『Screaming for Vengeance(邦題:復讐の叫び)』『Defenders of the Faith(邦題:背徳の掟)』を除く、全てのJudas Priestディスコグラフィの要素が入っていると言っても過言ではないと思います。

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